1.相続税対策の基本
●節税も大切ですが、まずは納税資金を確保することが大切です。
●相続税対策は、早めに行うのが効果的です。
●延納や物納は条件が厳しいです。
対策の優先順位
2015年からの新税制施行によって、相続税の課税対象者は増えることが見込まれます。課税対象者は、新税制施行前が亡くなった人のうち4%で、施行後は6%程度と試算されています。
まずは、資産を確認し、相続税がかかりそうかどうかを確認しましょう。その上で、相続税への対策が必要であれば早めにスタートするのが効果的です。ここで気を付けたいのは、対策の順番です。
例えば、相続税の節税対策として、保有している土地にアパートを建てる方法があります。しかし、相続財産の大部分が売却しにくい不動産である場合、節税効果が得られても、相続人同士でどう分けるかでもめる可能性があります。その点、預貯金で残していれば、相続税が高くてもスムーズに分けられるので、相続人同士でもめることなく、それぞれが相続した預貯金で相続税を支払うことができます。
相続対策には、大きく分けて3つの対策があります。
①遺産分割対策
②納税資金対策
③節税対策
一番大事なのは、①の遺産分割対策です。被相続人の一番の願いは、残された家族が幸せに暮らすことでしょうし、残された家族も相続で仲たがいすることを望んではいないでしょう。
そして、次に大事なのは、納税資金対策です。相続税は、相続発生から10か月以内に現金一括で納めるのが原則です。期限までに納税できない場合は、延納や物納という方法がありますが、どちらの場合も条件が厳しく簡単には利用できません。また、延納にかかる利子税はかなり高額なため、場合によっては銀行でお金を借りて相続税を支払った方が有利なケースもあります。
バランスを考えて対策を
納税資金をあらかじめ準備する方法としては、生命保険の活用や不動産の売却などがあります。一般に同じ金額なら、現金で所有するより不動産で所有した方が評価額が低くなり、節税効果は高いです(不動産は実勢価格のおおむね80%で評価)。しかし、節税に努めるあまり、肝心の納税資金を確保できないのは本末転倒です。バランスをよく考えながら対策を立てなければなりません。どんな対策がベストか、無理なく納税できる方法を考えることをおすすめします。