12.相続放棄

●借金が多い場合など、相続したくないならば、相続放棄ができます。

●相続放棄をするかしないかを決める期限は3か月です。

相続するかしないか決めることができます

相続財産には、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もあります。
マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合、そのまま相続しますと、残された家族は借金の返済に追われることになります。


また、「親族との遺産争いに巻き込まれたくないから、いっそのこと相続はしない」という方もいらっしゃれば、「苦労した兄に全財産をあげたいから相続したくない」という方もいらっしゃることでしょう。


こうして、様々な事情があるため、自分自身で相続するかしないかを決めることができます。

相続するかしないかを決める熟慮期間

相続するかしないかを決めるのは、「相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」です。
この期間を熟慮期間といいます。
近親者であれば、被相続人の死亡についてはすぐにわかるため、通常は被相続人の死亡日が「相続開始の日」になります。
つまり、被相続人の死亡日から3か月以内に相続するかしないかを決める必要があります。


一方、長らく海外に住んでいて、親戚でもほとんど付き合いがないようなケースでは、被相続人の死亡を知らないまま時が過ぎてしまうことがあります。
そのため、単純に「相続開始(死亡日)から3か月以内」ではなく、「自分が法律上、相続人となった事実を知ったときから3か月以内」となっています。

遺産相続3つのパターン

相続の方法は、3つあります。

①単純承認

②相続放棄

③限定承認

 

①単純承認

マイナスの財産も含むすべての財産を無条件に引き継ぐことです。

何も手続きをしないで3か月が経過すると、自動的に単純承認をしたことになります。

また、3か月以内に財産の一部を売却した場合も、単純承認を選んだとみなされます。


②相続放棄

こちらは、プラスの財産もマイナスの財産も何も引き継がない方法です。
相続放棄をする場合は、相続開始から3か月以内に、家庭裁判所にその旨を伝えます(申述)。
具体的には、家庭裁判所の所定の用紙(相続放棄申述書)に必要事項を記入して提出します。

相続放棄は一度手続きをしたら取り消すことができません。相続放棄をすることで、被相続人が残した借金の返済義務はなくなります。
しかし、例えば相続人が被相続人名義の自宅に住んでいた場合、自宅も手放すことになりますので、メリット・デメリットをよく見極めて選択する必要があります。
相続放棄は、相続人全員ですることもできますし、1人だけですることもできます。


③限定承認
こちらは、プラスの財産の範囲でマイナスの財産の債務を引き継ぐ方法です。
借金があるようだけれど全容がわからない、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いかわからないときには、この方法を選びます。
限定承認をするための手続きが非常に煩雑である点がデメリットです。
さらに、相続放棄と異なり、相続人全員で行わなければならないという不便さもあります。
そのため、実際にはあまり選択されません。
限定承認を選択する場合も、相続開始から3か月以内に、家庭裁判所に申述を行います。

相続放棄をした後

一部の人が相続放棄をすれば、同順位の他の相続人の相続割合が増えるか、同順位の人がいなければ次の順位の人へ相続の権利が移ることになります。
例えば、借金がある場合で1人が放棄をすれば、その借金の返済義務は他の法定相続人に順に移ります。
そのため、被相続人に借金がある場合は、法定相続人全員が順次相続放棄をしていかないと、誰かが借金を引き継ぐことになりますので注意が必要です。


相続放棄をすれば、はじめから相続人でなかったとみなされます。
結果、相続放棄をした相続人の子どもが代襲相続をして借金を肩代わりすることはありません。
相続放棄をすることで、相続人としての権利義務はすべて失います。
しかし、形見分けの品や仏壇やお墓、死亡退職金や生命保険金など、元々相続財産とされないものは受け取ることができます。

こちらのページもあわせてどうぞ