13.相続人の廃除

●相続人の廃除とは、被相続人の意思で相続人の権利を奪うことをいいます。

●相続人の権利が、奪われる相続欠格もあります。

相続させたくない意思の尊重

例えば、暴力をふるう、暴言を吐くなど、素行不良の子どもに財産をいっさい渡したくないと考える人もいます。

遺言という方法もありますが、遺留分を行使されたら、一部の財産を渡さなければなりません。


そこで、「いっさい相続させない」という意思を尊重した相続人の廃除という制度があります。

これは、相続人の権利をはく奪するもので、いったん認められなくなると遺留分の権利も主張できなくなります。


廃除が認められる理由として民法では、次の3つを挙げています。

①被相続人を虐待した

②被相続人に重大な侮辱を加えた

③その他著しい飛行があった

 

廃除を認めるかどうかは、家庭裁判所が判断します。

裁判所は、廃除の申し立ての内容が日常的にあることなのかどうか、原因は何かといった個別の事情を考慮して、慎重に判断します。

相続人の廃除は、生活保障のために認めている遺留分をも奪う制度です。

そのため、「働かずにいつまでも親のすねかじりをしている」くらいでは廃除の理由にはなりません。

虐待や侮辱の程度も、相当ひどいレベルでないと廃除は認められません。

 

なお、兄弟姉妹は廃除の対象になりません。

これは、兄弟姉妹には遺留分がないからです。

兄弟姉妹に相続させたくない場合は、その旨の遺言を作成すればよいのです。

また、廃除が認められますと、該当する相続人は相続する権利を失います。

相続放棄とは異なり、代襲相続は認められます。

強制的に相続権を失う場合

本来は相続人になる人でも、社会的正義に反するような行動をとった場合には、被相続人の意思に関係なく、相続の権利を失います(代襲相続は認められます)。

これを相続欠格といいます。


具体的には次のような行動が挙げられます。

①被相続人や相続人を殺害した

②被相続人が殺害されたことを知りながら、告発や告訴をしなかった

③詐欺や脅迫によって遺言を妨げた

④遺言書を偽造した

 

なお、相続欠格に該当する相続人が、被相続人の預金や不動産登記の相続手続きを始めてしまった場合、他の相続人はその相続が無効であることを申し立てることができます。

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